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貧血克服への道のり

2002年10月~、貧血に苦しみ、なんとか治したいともがき苦しみました。その過程で知識だけは過剰に詰め込まれたので、よい機会ついでに記してみました。

なお、以下では、ランナーに最も関係の深い「鉄欠乏症貧血」について、一般的・医学的な説明も交えていますが、あくまでランナーの立場からの個人的な思い、意見を中心に述べています。

僕も多くのwebページに教えられましたが、医学的な説明以上に、個人的な試みや経験談の方が役に立ちました。以下の記述が貧血に苦しんでいる方にとって多少なりとも参考になれば、と思います。

 

貧血とは

「貧血」=赤血球もしくはヘモグロビン濃度が減少している状態。

ヘモグロビンは血液の酸素運搬に重要な働きをする。酸素がうまく行き渡らない状態では運動能力が低下し、とりわけ有酸素運動のランニングにおいては致命的な打撃といえ、思うように走れなくなってしまう。

*血液検査上の正常値

  • 赤血球数(RBC)
    男性:400~550万個/mm3、女性:350~450万個/mm3
  • ヘモグロビン濃度(Hb)
    男性:13~17g/dl、女性:12~15g/dl
 

血清フェリチン

鉄欠乏症貧血の防止、改善には「赤血球数」、「ヘモグロビン濃度」に加え、「血清フェリチン」や「血清鉄」の数値に注意する必要がある。「血清フェリチン」とは、肝臓等に貯蔵されている鉄分のことで、鉄欠乏症貧血を把握する重要な指標。

体内の鉄の不足は、1)血清フェリチンの減少、2)ヘモグロビン濃度の減少という順で表れ、貯蔵はその逆に行われる。容器の下部にヘモグロビン、上部に血清フェリチンが詰まっていると思い浮かべればイメージしやすい。

ヘモグロビン濃度が低下しているということは、既に貧血は相当に進んでいる状態であり、貧血を未然に防ぐには、ヘモグロビンが減少する前の血清フェリチンの低下に注視しなければならない。

血清フェリチンは献血後のお知らせや一般の血液検査の検査項目にはないため、特別に依頼して検査してもらう。

血清フェリチンの正常値:25~280ng/ml

「女子ランナーはフェリチンの値が20ng/mlを切るあたりから調子を落とし、12ng/ml以下になるとまともには走れない」

(大阪体育大学豊岡示朗教授)

また、貧血の治療を開始した時、ヘモグロビンの値は1~2ヶ月で先に割合簡単に回復するが、貯蔵鉄としての血清フェリチンの改善には3~6ヶ月を要するため、継続的な取り組みが必要となる。

 

貧血の原因

「鉄欠乏症貧血」というように、体内の鉄の欠乏が原因。ただ、一般的には男性の場合、通常の生活をしている限り、体内の鉄が不足することは考えにくく、特別な原因が疑われる。

  • 出血(下血、痔)
  • 鉄分を摂取しない極端に偏った食生活、菜食主義
  • 急激なダイエット、体重減少

ランナーに特有の原因

適度の距離を過分の負担をかけずに走るジョギング程度であれば、赤血球数・ヘモグロビンはむしろ好ましい数値を示すが、競技として追い込んでゆくマラソンランナー、シリアスランナーはヘモグロビン濃度が低く、貧血になりやすい。

  • 赤血球の破壊
    地面に足を叩きつけることで足の裏から赤血球が破壊されてしまう。
    マラソン、バスケット、バレー競技者に貧血が多く見られる
  • 大量の発汗
    鉄は汗や尿と一緒にも失われてゆく
  • 早朝、炎天下の激しいトレーニング
    赤血球が壊れやすく心臓にも負担がかかる

*「見せかけの貧血」

ランナーの場合、血液の循環量が多いことで(流れを良くするために)、結果的にヘモグロビン濃度が低くなってしまうことが多くみられる。この段階でなら異常ではないとされる。

 

貧血の兆候・症状

シリアスランナーにとって、貧血は「思うように走れなくなる」「タイムが悪くなる」ことをもたらす憎き敵。

ただ、貧血になったからといって、調子は悪くなるものの、全く走れないわけではない。また、特に日常生活にはさほどの支障がないと自分では思ってしまうため、自覚症状にも欠ける。このため、貧血を進めてしまうことにもなる。いかにして、貧血になる以前に回避するか、重度の貧血となってしまう前に早めに兆候をキャッチするかが重要になる。

症状、兆候と考えられるものについて挙げてみると・・・

  • 他に理由は思いつかないのに、うまく走れない
  • 身体が重く感じられる
  • だるい、疲れやすい
  • 足が上がらない、もつれる、つまづく
  • 走り出しがとりわけきつい、ペースにのるまで時間がかかる
  • 自転車のペダルを漕ぐのがきつい
  • 階段の昇りがきつい
  • 集中力が低下する
  • 唇の端が切れる(口角炎)
  • 指の爪がへこむ(スプーン爪)
  • 指の爪の白い部分が消えてゆく
  • 下まぶたをめくって見える赤み(血管)が消えてゆく
  • だるい、疲れやすい
  • 身体の冷え、特に手足が冷える

放置すると・・・

  • 顔色が悪くなる(青い、白い、黄色い)
  • 顔がむくんでくる
  • 髪の毛が抜ける
  • 動悸、息切れ
 

治療、改善策

鉄欠乏症貧血になってしまった場合の治療は、原因を見極めると同時に、鉄を摂取することに尽きる。

鉄剤の服用

早めに病院(内科)を訪れ、医師の指示の下で鉄剤を処方してもらう。市販の鉄タブはあくまで栄養機能食品であるため、日常生活での不足を補う分には良いと思われるが、明らかな貧血の場合には絶対量が足りない。

僕が医師から処方された代表的な鉄剤「スローフィー」「フェロミア」1錠中の鉄含有量は50mgであるのに対し、「ファンケル」「ネーチャーメード」等の市販の鉄タブは1錠中2、3mg。また、成分も異なるため、体内への摂取・消化は比較にならないほどの大きな差がある。

鉄を含む食品の積極的な摂取

  • レバー(鉄含有量は豚・鶏・牛の順に多い)
    *但し、山口県のスーパー等で豚レバーはあまり見られない(過去に豚レバーの食中毒があって、流通禁止令でもあったのか?)
  • 魚貝類(カツオ、マグロ、カキ、アサリ、ハマグリ)
  • 良質たんぱく質(赤身の肉、魚、牛乳、卵)
  • 鉄の吸収率を高めるため、ビタミンCと一緒に取る
  • 鉄の吸収を阻害する食品との取り合わせを避ける
    タンニン(コーヒー、紅茶、緑茶等)、シュウ酸(ほうれん草等)、フィチン酸(玄米、豆等)、大量の食物繊維

鉄摂取のその他の工夫

  • 鉄鍋、鉄瓶の使用
    料理中に鉄が溶け出す、また、体内への吸収もよい
 

僕のもがいた方策~食事

僕は5年前にもヘモグロビンが10.8まで低下する重度の貧血を経験しており、以上に挙げたことは自分でも充分わかっていたつもりだった。にもかかわらず今回、再びなってしまったことで痛烈に反省させられた。

大切な防府読売マラソンを1ヶ月半後に控えていたことで焦り、「今度ばかりは」と、なりふりかまわず色んな方法を試してみた。貧血が判明してから、僕のとった方策は以下のとおり。ただし、何が効いたか効かないか、治験効果は不明。

  • 医師に処方された鉄剤の服用
    これは絶対。正しく服用を続ければ通常、1~2ヶ月でヘモグロビン濃度は改善する
  • 鉄を含む食品の積極的摂取
    レバー、貝類、たんぱく質を意識した食事
    練習量も抑えざるを得ないので体重は増えてしまうが、まずはよく食べることを優先させた
  • 野菜ジュースを飲む
    できれば自家製を
  • 鉄鍋の使用
    調理中に鉄が溶け出すと分かってはいても、普通、使おうという気になれない鉄鍋。でも、NHK放映の『ためしてガッテン』で鉄鍋・鉄瓶から溶け出す鉄はその組織上、レバー等の食品よりも体内への吸収が良いという記事(本)を遅ればせながら知り、思い切って購入。厨房店で鉄鍋を求めると「貧血ですか?」ときかれたくらいだから、TV放送の影響は大きいよう。さすがに鉄瓶までは使っていない。
    (追記:その後も貧血を繰り返してしまうので鉄瓶も買って常用しています。)
  • クロレラの服用
    懐かしい「クロレラ」・・・。たまたま家に残っていたものがあったので譲り受けて飲んだ。「青汁」、「大麦青葉」等、この類の健康関連商品は通販ショップやドラッグストアにたくさんあるけれど、効用を求めるなら定評あるものでないと。
  • コーヒー断ち
    コーヒーのヘビー・ドランカーであるというのが貧血の一因にもなっていた(せっかく鉄分を摂取しても吸収を悪くしていた)と思う。運動前に飲むコーヒーは、カフェインが脂肪の燃焼を促進させる働きを持つ等、食前食後に合わせなければコーヒー自体は決して悪い飲み物ではないが、まずは鉄の吸収を第一に考え、2ヶ月間は全くコーヒー、紅茶、緑茶を断った。クリスマスケーキも麦茶で。その後にコーヒーは解禁させて現在に至っているが、今後は以前のような暴飲は避けるようにしないと・・・、と思っている。
    (追記:非常な珈琲好きなので、今はせめてもの抵抗に鉄瓶でお湯を沸かしています。)
 

僕のもがいた方策~貧血中のトレーニング

貧血になると思うように走れなくなる。けれども、全く走れないわけではない。走ろうと思えば、足取りは重いけれども、充分、走れる。しかし、そのことで一層、貧血を加速させてしまう・・・。

「走れるけれども、あまり走らない方がいい」という、ここが貧血の一番つらいところ。

足のケガ、故障ならば痛みがあれば当然走れないし、治ってゆく過程がはっきりと分かる。一方、貧血の改善には時間がかかる上に、今どの程度回復して、どのくらいの練習ならばできるのかを判断するのが難しい。どの程度の距離、強度なら走れるのか、どういうトレーニングがよいのか、いつから通常のメニューに戻してゆくのか、皆、悩んでいると思う。

以下、僕のとった練習方法、心がけたことについて。食事編に同じく、何が効果をもたらしたかははっきり言えないけれども。

  • 練習量を抑える
  • 基本的にはあまり長くない距離のジョグ中心
  • できるだけ柔らかい路面(土、芝)を選んで走る
    ただ、そうはいっても土や芝の路面で走れるような都合の良い場所はそうあるものではなく、面白くなくても短い距離の路面を繰り返して走った。
  • シューズを買い足した
    足取りが重くなると、足裏の痛みも非常に気になってくる。赤血球の破壊を抑えるためにもソールの厚いシューズを身体が(足が)求めるように感じられた。これまで使ったこともない、片足330gもの初心者向けシューズを購入し、しばらくはこれで走った。貧血が改善されてゆくと、さすがに重さが気になってきて、今はウォーク用。
  • インターバルはしない
  • 調子がよければ少しずつビルドアップ
  • タイムは気にしないようにする
    回復までにはしばらく時間がかかり、その間、どんどん落ちてゆくので自信を失くしてしまう。
  • 練習できないことに耐える
    ケガ同様、これが一番重要で、しかも難しいことと思う。ランナーにとって走れないことほどつらいものはないが、これもランニングに宿命のものと受け入れ、天が課した試練と思って向き合う。
 

データ・体調の推移(2002.10~)

血液検査データ推移(単位略)

主要検査項目 適正値  10/31  12/2   1/6   2/5
赤血球数 410~550 407 476 474 456
ヘモグロビン濃度 14~18 12.9 15.2 15.2 14.8
血清フェリチン 25~230 5 18 19 20

10月31日の検査結果が判明して、11月5日より鉄剤服用を開始した。

上記のとおり、ヘモグロビン濃度は1ヶ月で急激に回復しているが、血清フェリチンは3ヶ月経過後もなお、適正値までには改善されなかった。

貧血治療には血清フェリチンの回復まで継続的な鉄剤服用が重要というのが鉄則(!)らしいのだが、今回の僕のケースでは医師の判断により鉄剤の処方は3ヶ月でストップされた。僕としては、なお半年程度の服用継続を希望したのだけれど、赤血球数及びヘモグロビン濃度に一応の改善がみられたこと、及び、長期にわたる鉄剤服用の弊害が考えられるという理由のためであった。

3ヶ月服用してもあまり改善されなかったことは、僕自身、自覚していたように、やはり、それ自体が血清フェリチンの貯蔵量が少ない、貧血になりやすい体質を示しているということなのではないかとも思う。

体調の推移

10月 ・下旬~県実業団駅伝(10/28、4.2km)貧血に気付く
11月 ・上中旬~走る度に調子が落ちてゆく最悪期
(ハーフレースを欠場)
・下旬~最悪期脱出を実感できるようになる
12月 ・上旬~徐々にトレーニングを戻す、スタミナははっきり落ちている
・中旬~回復を自覚するが、本調子には遠いため、目標としていた防府読売マラソンの欠場を決める
・下旬~ケガの多発
1月 ・上旬~ケガの治癒に専念
・中旬~3ヶ月ぶりのレース(駅伝)出場
・下旬~駅伝出場、調子上向く
2月 ・上旬~別大マラソン(2/2)完走 自己ベストを6分更新
・中旬~マラソン後の疲労なく3km、駅伝レースでも好調
 

リバウンド

貧血が改善すると、それまで練習量を抑えていた分、うまく疲労が抜けて以前よりも好結果を生むことがある(らしい)。これを「貧血リバウンド」と呼んでいる。

僕の場合は貧血となる前の調子があまりに良かったので、以前以上の記録が出るというようなことはさすがになかった。仮にあるとしても、5kmくらいまでの短い距離なのではないかと思う。先に書いたように、貧血の治療を開始すると、元々、体内で不足していた状態ゆえ鉄の吸収も非常によく、ヘモグロビン濃度は鉄剤の服用等で割合、簡単にかつ急激に回復する。ヘモグロビン濃度の改善により酸素運搬能力が高まることで、何となくダッシュが利くようになることを実感できた。

ただ、長い距離、時間を走りきるスタミナは簡単に取り戻せないことも感じた。僕はマラソンに向けていたところだったから、練習でも以前は20km走り切れていたところが、15kmでがくんと落ちてしまうなど、落ちてしまったスタミナはやはり、再度つけ直してゆく必要があることを感じた。

 

貧血明けのケガ

上記の通り、鉄欠乏症貧血は鉄剤の摂取による適切な治療が行われれば、1~数ヶ月で改善される。また、貧血明けにはリバウンド効果も期待できるかもしれない。

ただし、貧血の改善に合わせて、今度はケガにも苦しめられた。貧血で走れなかった、トレーニング量を抑えていた分、確実に体力、筋力は衰えている。思うように走れず鬱積していたストレスもあって、貧血状態の改善が見え出すとすぐに以前同様のトレーニングに戻ろうとする、気持ちがはやってしまった。いきおい、簡単にケガを引き起こしてしまう。

貧血後にさらにケガで走れなくなってしまうという悪循環を避けるためにも、治療中の筋力維持、また、本格的なトレーニング再開にあたっては段階を踏んで徐々に慣らしてゆくことが重要と痛感させられた。学ばせられた。

貧血治療=貧血そのものの回復+筋力維持

*このあたりは、以下の完走記(欠場記)にも詳しく記しています。


2003-02-22


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