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世界の中心で、愛をさけぶ
せつなく美しく
今さら説明を要しないが、300万部を突破し、国内で最多部数記録を塗り替えた同名小説の映画化。特に若い高校生らに読まれている、というのはきいていた(館内も9割方、中高生であった)のだが、それだけに、若い彼らの感性に今の自分がついてゆけるかどうか不安だったし、ここまで売れると、かえって読む気になれずにいた。感動の、とか、涙が止まらず・・・という紹介文句が先にインプットされて、敬遠してしまっていた。
しかしながら、それは杞憂に終わったようで、映画は素直に泣けた。小説の方を知らずにいたのがかえって良かったかもしれない。言葉にしてしまうと安っぽくなってしまうが、まさに、「せつない」映画であった。映画を観るまでは「何てキザなタイトル」と、引けてしまっていたのだけれど、観終わる頃には一転、「絶対これしかない!」というくらいに、そのストレートさを文句なく支持している自分がいた。
1986年という時代
『世界の中心で──』が追い抜くまでの国内小説ベストセラーは、村上春樹氏の『ノルウェイの森』。この映画を観ながら、やはり僕が連想していたのも『ノルウェイの森』である。
別世界のサナトリウムと不治の病の白血病。カセットテープによる交換日記と長い手紙のやりとり。ともに、若くして「人の死」という事実と向き合わざるを得なくなった状況。そして、残された「僕」が大きな喪失感に苦しみながらも、「君」ではない、「今」ここにいる別の女性と、これからを生きてゆくしかないという気持ちに至るまで・・・。実に多くの点で『ノルウェイの森』との近似性を感じないわけにゆかない。たぶん、今、『世界の中心で──』に涙する若い人たちと同じように、当時、『ノルウェイの森』に衝撃を受けた僕らと同年代の人はそう感じたろうと思う。
ちなみに『世界の中心で──』で描かれているのが1986年、『ノルウェイの森』の刊行が1987年。僕にとっては19歳、20歳だった頃。恥ずかしながら僕もサクさながらに当時の自分の高校時代から20歳前後の頃を強く思い出していた。この映画がそうであるように、懐かしい、というのとはまた違う、この映画と『ノルウェイの森』とから引き出される、せつない思いである。
初恋の輝き
アキ役の長澤まさみ、サク役の森山未來、彼ら2人の演技が素晴らしい。2人がそれぞれ、自己紹介するときの「好きなモノ、好きな食べもの、好きな映画」の説明や、バイクに乗った2人が、言葉にならない衝動を叫ぶシーンなどが印象的であった。主人公らの、きらきらと輝く青春時代がとても美しくてまぶしい。容姿端麗、頭も良くてスポーツもできて、学校一の存在という高嶺の花のヒロインに、焼きそばパンをほおばるフツーの男の子の組み合わせ。いかにも映画的な設定であるけれど、でも誰もが映画を観ている間は自分を重ねてゆけるようで不思議と違和感はない。初恋はこんなふうに甘くて、でも苦しくて、そして、時を経て振り返るときに何より美しくよみがえるモノだよと、2人の純粋さがお手本を見せてくれるようである。
対照的に、3つ前の席で観ていた高校生の男女グループ(野郎だけでないところはまだいい)、男は皆、野球帽を横向きにかぶり(館内くらいは脱げよ)、じゃらじゃらと鎖の付いたダボダボの短足パンツで(だらしないゼ)、いいシーンの都度、照れ隠しのせいか、やたらと冷やかしあって(黙って観れねえのか(怒)!)、後頭部を蹴飛ばしてやりたいほどだった。昔も今も、「普通でマジメ」というのは、高校生らには「ダサイ」んだろうけれど、若さというのは何もしなくても魅力的なのだから、変なところで個性を発揮しない方がずっとかっこいいのに、と僕は思う。
彼らにはもったいないくらいの映画に思えた。むしろ、心配していたのとはまるで逆に、若くない僕が映画に胸を強く打たれた、僕の映画史の十指に入るんじゃないかと思うくらいに大きく感動したのは、ラジオから「君に会えて」が流れるという設定の(そして、DJ役もだったらしい)渡辺美里が同学年、主演の大沢たかおが1つ下、行定勲監督が2つ下・・・というあたりの、同時代的感性がこの映画の基調をなしていたためだったろうか。観ながらボロボロ泣けた、涙が滴り落ちてきた映画なんて、随分と久しぶりのことであった。
あの頃、
僕は世界が溢れるくらい
恋をした。
あの時の君の声
今でも僕は
聞くことができる
僕は生き残ってしまった
ロミオなんだ。
でも、たとえ今
この胸に君を感じなくても
僕は君を生きていく。
満足度:★★★★
2004年日本
2004/06/05 ぱるるプラザ山口にて鑑賞
余録
新しい職場の難解さにまだ頭がなじまず、最近は本を読む気にあまりなれない。こんなときはシートに身を任せて観れる映画が何より。かくして3週続けての映画鑑賞となった(毎週、前作を上回る感動を得られた)。今回の週末2日間は、特に、滅多に観れない字幕プリント版での上映ということもあり、これもうんと久しぶりに邦画を観ることができた。邦画の良さを堪能し、やっぱり母国の映画をもっと観たいなという思いをあらためて強くした。
2004-06-13



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