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逆境を生きる
青少年向け講演集
先日エントリしたように、死後また今、脚光を浴びている城山氏の、これも出版社の商売の一つだろう、書き下ろしではなく講演等を取りまとめた編集モノ(2010年2月刊行)。一度、図書館で借りて読み切れずに返していたのをあらためて借り直し、今度はちゃんと読み終えた。
最終頁に福岡の高校でなされた講演など、とある。なるほど高校生を対象にした内容だなとうなずける、青雲之志といおうか、著者が小説等で伝えようとした人間の魅力、人としてのあるべき生き方が分かりやすく語られている。偉人伝のエピソード集、といったところ。
今、別に氏の小説を読んでいる最中である、そちらは小説の内容もさることながら鬼気迫る、すさまじい執念で歴史の真実に迫ろうとする著者の迫力に打たれるところが大きいのだが、こちらは優しくかみ砕いた語り口で城山氏のエッセンスがすとんと胸に落ちてくる。もちろんそれでいてしびれる。胸を打つ。
直接にはタイトルの「逆境」ということにはあまり限定されない、「信念を貫く」という方が主旨に近いように思える。先日、考えさせられた「理念」ということもキーワードとして何度か出てくる。
歴史の嘘
歴史上の人物のエピソードが語られる中で、毛利元就の嘘、というのが二つ挙げられている(三本の矢と中国一の大大名)。他ならぬ地元でありながら、僕は嘘以前の史実も知らなかった点があり、これにも目からうろこの思いであった。
僕は日本史を選択しなかったので疎い(といって世界史に明るいわけでもないが)という以上に、今さらながらに自分の無知ぶりを思い知らされもした。ちょうど今、地元では山口新聞と中国新聞に連載中の堺屋太一氏の「三人の二代目」を昨年は運良く読めていた、これにも関連していたから僕もこのあたりには興味を感じている。
徹底的な情報網を持ち謀略家だった毛利元就の教育は孫の輝元まで染み透ったはずだが、輝元は情報力の落ちた安国寺恵瓊を仰いだ判断誤りで大阪方についてしまう。
他の孫たちである小早川、吉川が家康に通じて関ヶ原の勝負は決まった。
ところが家康は約束を守らず毛利を取り潰す。ただ、毛利十ヶ国全てを取り上げたが、吉川広家は裏切りの中心人物で関ヶ原勝利の勲功大ということで周防・長門の二国を与えた。
吉川広家がそれを全て毛利本家に差し出したことで毛利家は防長二国の太守として幕末まで残り、討幕運動の源となった。
吉川広家には毛利輝元と違って祖父元就の教育が孫の代まで生きていた。広家は自分の家を捨ててでも自分が毛利本家の陪臣になり下がっても、毛利本家を守るという教えを守り抜いた。
<自分が人生で得てきた理念>や<あるべき姿>を子に伝えておくのは大事なことだと、城山氏が翻訳を手がけてベストセラーになったキングスレイ・ウォード「ビジネスマンの父から息子への30通の手紙」も元就の手紙が記憶にあったからだという。
他に興味を引かれた中では特に広田弘毅。広田が福岡出身ということもあり、先の学校講演ではこの辺りがメインだったろうか。また田中正造や浜口雄幸、といったあたりもしびれさせる。壮絶な生き様が涙を誘う。本当に自分がイメージでしか知らない人物の、氏が調べてゆく中で分かってきた本当の姿に触れることができ、これから読んでみたいと非常に興味を覚えた。
返してしまうのが惜しく買い直すことも思案中。以下、備忘録として章タイトルと簡単なメモ。
- 三人の男が東京駅ですれ違う
- 御木本幸吉、広田弘毅、浜口雄幸
- 1. 初心が魅力をつくる
- 型にはまらない、初心を持ち続ける
- 2. 人は、その性格に合った事件にしか出会わない
- 渋沢栄一 自分の目の前にいる人に心のすべてを傾けて対応した
- 3. 魅力ある指導者の条件
- 伊達政宗、毛利元就、
- 4. 父から息子へ伝えるべき事柄
- 取り返しの付かない唯一の失敗は挑まないこと
- 5. 少しだけ無理をしてみる
- 中山素平 箱から出る、安住しない
- 平民出身総理、広田弘毅の家族
- 6. 自ら計らわず
- 福岡市水鏡天満宮
- 自ら計らう吉田茂と計らわない広田、同期2人の生き方
- 7. 人間への尽きせぬ興味
- 鈴木善幸、中曽根康弘、盛田昭夫
- 蟻でありトンボであり人間であり
- 孜々営々、黙々と働き、複眼思考を持ち、人間として豊かであり愛されること
- 8. 強く生きる
- 野上弥生子、百歳の現役作家
- 田中正造「辛酸」、人として「あるべき姿」を求める
- 9. 人間を支える三本の柱
- self(個の世界),intimacy(新近性),achievement(達成)
- 10.男子の本懐
- 浜口雄幸 銃弾に倒れた後、墨で塗った布を靴代わりに巻き付けて最期の国会に立った
- 国民への約束を守り通した
満足度:★★★★★
2010-05-23








